【ストーリー】
19世紀末、パリの街は”銀の狼”という通り名で呼ばれる殺し屋に戦慄を覚えていた。”銀の狼”は常に特権階級の人々や私服を肥やそうとする堕落した政治家たちを餌食に、狙った獲物は決して逃がさなかった。警察は躍起になって足取りを追うものの、”銀の狼”の逃げ足の速さ、証拠を残さない仕事ぶりに何の手掛かりもつかめずにいた。ただ一度だけ、かすかに目撃された後ろ姿が、銀色になびく狼のたてがみの様だったことから、”銀の狼”と呼ばれるようになったのである。
この殺し屋”銀の狼”は、シルバと名乗り、同じ家業の仲間レイから仕事の連絡を受け、非常な殺人を繰り返していた。しかし、シルバには過去の記憶が一切なかった。自分が誰なのか確かめることもできず、仕事を終えた夜はいつも同じ悪夢にうなされるのだった。死んでいく母娘、炎、死体にすがって泣き叫ぶ女……。恐ろしい悪夢だった。
そんなある日、シルバはいつも通り仕事を終えるが、殺した男の妻子に顔を見られてしまう。警察は早速 親子の証言を得てモンタージュ作りに着手していた。それを予見して、シルバは一刻も早く姿を消さなければならなかったが、折から開催中の博覧会の会場へと向かう。それは博覧会に出席する国務大臣ジャンルイの妻ミレイユが、いつも悪夢に現れ、死体にすがって泣く女にそっくりだったからである。
シルバはこの女の存在を確かめるために、人ごみにまぎれてミレイユを誘拐した。ミレイユは突然現れたシルバに驚愕するが、記憶を取り戻そうと切実な眼差しを向ける彼に、事件が起こったあの日の出来事を話し始める……。
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